働くのが怖い
「働こうかな」へ、目からウロコの処方箋
「働くのが怖い」
人おこしシェアハウスに来る若者たちから、よく耳にする言葉です。
「他の人たちはみんな普通に働けているのに」
「怖くて働けないなんて、恥ずかしくて言えない」
たぶん、今までそんな風に自分を責めてきたのでしょう。
でも実はこれ、ひきこもっている若者の大多数が感じていることですし、それどころか、ひきこもっていなくても、働いたことのない人や、今までアルバイトで嫌な思いをしたことがある人は、みんな感じることですよね。
だから恥じる必要なんて、全然ありません。
そして・・・
「働くのが怖い」って言っていた彼らも、今では普通に働いています!
こんにちは、能登といいます。
(筆者:能登大次 NPO法人山村エンタープライズ 代表理事)
岡山県の山奥で、「ひきこもり」や「不登校」と呼ばれる若者たちが暮らすシェアハウスを運営しています。
「働くのが怖くて、何年も家から出られなかった」若者を、これまで何人も、何十人も、見てきました。
ですから、まず安心してください。あなただけじゃありません。
そして、その「怖い」には、ちゃんと意味があります。
ということでこのコラムでは、
・なぜ「働くのが怖い」のか。
そして
・どうやったら怖くなくなって、働けるようになるのか。
を、10年以上、100人以上の若者たちと過ごしてきた経験に基づいて、めっちゃわかりやすくお伝えしてみたいと思います。
― もくじ ―
「働くのが怖い」には意味がある
働くのが怖いのは「本能」
「怖くて働けない」とき、多くの人は自分を責めはじめます。
「みんな働いているのに、なんで自分だけ…」
「こんなことで怖がるのは、甘えなんじゃないか」
でもちょっと待ってください。
熱があって体が動かないのは、「サボり」でしょうか?
違いますよね。それは、身体が「今は休んで」と伝えてくれているサインです。
「働くのがこわい」も、実はこれと同じなんです。
あなたの心が、今のあなたを守るために「怖い」という感覚でストップをかけてくれている。
つまり生物としての「防衛本能」が正常に働いているということです。
本能が「今は、働いちゃダメ!!」と言っているのですから、「今は働かない」のが、生物としての正しい選択といってもいいくらいの状況なんです。
「働くのが怖い」は防衛本能。「今は働かない」のが、生物としての正しい選択、といってもいいくらいの状況なんです。
どうでしょう、少し、気持ちが軽くなってきましたか?
「でもそんなの気休めで言っているだけでしょ・・」
と思ったかもしれませんね。
ではそんなあなたに、これが気休めではないということを、実例に基づいてご説明していきます。
働くのが怖いのは「当たり前」
働くということは「お金をもらえる」ということですから、必然的に「責任」がついてきます。
「働くのが怖い」とき、その原因の多くは、この「責任」です。
例えば、飲食店で働いているとしましょう。
あなた「すみません、寝坊して遅刻しました・・」
上司「おお構わんよ、ぼちぼち厨房入ってくれたら」
あなた「また焦がしちゃいました・・」
上司「ええよ。気にしないでもう一回作ってみて」
あなた「作業が遅くて、テーブルの片付けが全然できてないです・・」
上司「ほな私がやっておこうか」
このくらい責任が軽かったらどうですか?
「怖さ」がなくならないまでも、半減、くらいにはなりませんか?
でも実際の仕事の99.9%は、そういうわけにはいきません。
だって、待っているお客様に喜んでもらう、締め切りまでに品物を納品する、というのが会社の役割ですからね。
- 決められた時間までに
- 決められたやり方で
- ミスなく
- 結果を出す
ことが求められます。
これが「責任」です。
そしてもしこの「責任」が果たせなかったら、、指導されたり、他の人と比べられたり、お給料に影響したり・・・
だから「働くのが怖い」のではないでしょうか?
でもよく考えてみれば、この「責任」に対するプレッシャーは、誰にでも発生するもの、ですよね。
プレッシャーの感じ方の大小は個人差があると思いますが、何も感じない人はおそらく一人もいないと思います。
「働くのが怖い」理由
でも社会では、多くの人は普通に働けているのに、人おこしシェアハウスに来た若者やあなたにとっては、そのプレッシャーが「恐怖」にまでなってしまうのは、なぜなのでしょうか。
働くのが怖い理由①:経験不足
それはまず第一に「経験がないから」「経験が少ないから」です。
人は「わからないもの」に対して恐怖を感じます。
また経験が少ないとプレッシャーに対する耐性がありませんから、ちょっとした不安が「恐怖」になってしまうのです。
例えば・・、私は子供の頃、電車の自動改札を通るのが怖くて、いつも半泣きしながら必死で走り抜けていました。笑(みなさんもそうじゃなかったですか?私だけ?笑)もしも切符を通すのがうまくいかなくてあの自動ドアがバタンって閉まったら閉じ込められてしまうのでは・・という不安がつのって恐怖心になっていたんです。
でも今となっては、ぼーっと考え事をしながら日常的に「ピピっ」と通過しています。経験値の積み上げによって「バタンってなったとしても、大したことにはならんし、大丈夫。そもそもパタンってならんし」という安心感を、心と体が覚えてくれたから、もう大丈夫。というか、自動改札にびびってる大人なんてあんまり見たことないですよね。笑
実は「働くのが怖い」も、私の改札と、仕組みは同じです。
- 言われた時間までに終わらなかったら・・
- 万が一自分の判断が間違っていて、他のスタッフに負担をかけてしまったら・・
- 自分のミスのせいで、お客さんを怒らせてしまったら・・
- いやその前にもし寝坊して遅刻したら絶対怒られるし・・
経験が足りないから、ありとあらゆる不安が「恐怖心」となって押し寄せてしまうのです。
でも、ある程度人生経験を積んでいくと、「遅れる」とか「ミスった」なんて、誰にでもよくあることで、しかも怒られるとか迷惑かけるとか、そんなことも仕事をしていれば、誰でも通る道。できれば避けたいけど、「今日はやっちまったな〜」くらいで済ませられるようになってきます。つまり、ピピっと通過です。笑
働くのが怖い理由②:過去の苦い経験
もう一つの理由は逆に、これまでのネガティブな経験の積み重ねです。
例えば家庭や学校で、ちょっとした失敗をした時に、ひどく怒られて傷ついた経験があったりしませんか?
あるいは、とにかく失敗をしないように、遅刻しないように、しつこいくらいに厳しく言われてきたかもしれませんね。
さらに、実際にアルバイトなどで働いてみたときに、上司がひどく厳しい人で、ちょっとしたミスについてこっぴどく叱責されてしまったり・・。
働くのが怖くなってしまった若者の中には、そんな風に、幼少期から「失敗」に対して、トラウマと言っていいほどの恐怖心が張り付いてしまっている方も、とても多いです。
これはもう、説明するまでもありませんね。
幼少期からずっと言われ続けたら、あるいは思い切って飛び込んだバイト先でそんな経験をしてしまったら、それはもう、「働くのが怖い」のは、当たり前です。
そして、多くの若者たちは、「経験不足による恐怖」と「ネガティブな経験の積み重ね」の両方を抱えています。そんな状態で「明日からはりきって働くぞ!」なんて、なるはずもありませんよね。
「働くのが怖い」人が、働けるようになる処方箋
どうでしょうか。
私が「今は働かない方がいい」と言ったのが、気休めではないこと、わかっていただけたでしょうか。
「わかったけど、そうは言っても働けないままでは困るんですけど・・」
そうですよね、では次は、どうしたら働くのが怖くなくなって、働けるようになるのか、について、一緒に考えていきましょう。
「働くのが怖い」克服に必要な経験値とは
先ほど、働くのが怖いのは、「人生経験の不足」というお話をしました。
では、どんな「人生経験」が不足しているのでしょうか?
と聞かれて、おそらくみなさんは、
「そりゃアルバイトとか、ボランティアとか、そういう『仕事』の経験でしょう」
と思ったのではないでしょうか。
でも、人おこしシェアハウスに来ている若者たちが、「怖い」から「大丈夫」に変化していく姿をたくさん見てきてわかったのは、それとは正反対のことだったんです。
「働くのが怖い」ならまず「遊ぶ」べし?
私たちのシェアハウスでは、「楽しいことファースト」という言葉を大切にしています。
つまり
働きたければ、まず遊ぶべし。
びっくりしたでしょう?笑
家庭や学校では、みんなこう言われていますよね。
「勉強とか仕事とか、まずはやるべきことをやりなさい。そういう最低限のことができてないのに、遊ぶなんてもってのほかでしょう!」
そう、今の社会ではこれが「常識」になっていますよね。
でもこの常識に従った結果、今の社会はどうなっていますか?
こんなにもたくさんの子どもが不登校になり、こんなにもたくさんの若者たちがひきこもりになり、大人たちが必死になって学校に行かせよう、働かせようとすればするほど状況は悪くなって、8050問題、さらに9060問題へ・・・。
不登校問題・ひきこもり問題は、解決どころか、悪化の一途をたどっていますよね。
一方で、人おこしシェアハウスではその「常識」の正反対のことをしています。
私は毎月、入居者1人1人から「やりたいこと」を聞いて、その一つ一つをできる限り叶えてあげられるよう、体験活動のメニューを組んでいきます。
「海に行って海鮮丼が食べたい」→「よし、来月行こう!」
「映画を見たい」→「みんなでイオンモールに行こう!」
「ピザが食べたい」→「来週、みんなで作って焼こう!」
「山登りしてみたい」→「地域の登山好きのおっちゃんに案内してもらおう!」
これが、私たちのやっている「就労支援」です。笑
「遊んでるだけじゃない」
「それのどこが就労支援なの?」
そう思いますか?
でもその答えは、彼らが証明してくれています。
そういう楽しい時間をたっぷりすごし、日常を笑顔で過ごせるようになってくると・・・、
「どこかでアルバイト、できませんか?」
働くのが怖かったはずの彼らが、自分から「働きたい」と言ってくるんです。
そして、誰にやらされるでもなく、こうして自分から働き始めたら、あとは自分の力でどんどん前に進んでいきます。
「働くのが怖い」を乗り越えた若者たち
論より証拠。
ということで、何人かの生き証人たち(笑)をご紹介しますね。
人おこしシェアハウスで「楽しいことファースト」を実践し、「働くのが怖い」から「働きたい」へ、そして自分の力でぐんぐん前に進んでいる3人にインタビューした動画です。
9年間ひきこもっていた「みーくん」
短時間のアルバイトをしながら独学で簿記の資格をとり、経理職へ。
突然大学に行けなくなった「Yくん」
介護のアルバイトをしながら資格をとり、施設の管理者へ。
ずっと不登校だった「Kくん」
恋が背中を押してくれて農業に生きがいを。
「楽しいことファースト」vs「就労ファースト」
「働くのが怖い」のに「就労ファースト」をすると・・
現在の社会では、「まずは働けるようにならないと」が常識ですから、「働くのが怖い」状態の若者たちを、とにかく就労させようとします。
でもこれまで説明してきたように、「働くのが怖い」ということは、「まだ働けるコンディションではない」ことを意味しているのですから、結果は目に見えています。
がんばって履歴書を書き、いくつもの面接を受けて、なんとか仕事を見つけて働き始めたものの・・続かない。たとえ続いたとしても、体を引きずるようにして出勤し、ずたぼろになって帰宅して、朝になったらまた体を引きずって・・そんな果てしない日々の繰り返し。
確かに、世間の大人たちの言う通りに「働ける」ようになったのかもしれません。
でも、そんな風に繰り返される日々の先に、あなたの幸せは待っているのでしょうか?
私には到底そうは思えません。
これが「働くのが怖い」若者に「まずは働くべし」の常識を押し付けた結果です。
「働くのが怖い」から「働きたい」に進む正しい順序
さて「働くのが怖い」と検索して、ここまでこのコラムを読んでくれたみなさん、ここでぜひ素直な気持ちで自分に問うてみてください。もしいま「働かなくていいから、好きなことしんちゃい」と言われたら、どんなこと、思い浮かべますか?
「実は・・、今はおもいっきりモンハンやりたい」
「誰でもいいからアニメの話ででも笑い合える友達がほしい」
「彼女とカフェに行くとか、ツレと海に遊びに行くとか、そういうリア充なことしてみたい」
いままでずーっと周りから言われてきた「〜すべき」をいったんぜ〜んぶはずして「なし」にしたら、ほんとは、そういうこと、したくないですか?
だって、せっかくこの世に生まれてきたんだから。この人生、楽しみたくないですか?
ですよね。そう、それが正常です。
世間の常識となっている「べき論」は、順序があべこべなんです。
だから私たちのスローガンはいつも「楽しいことファースト」。
そして思いっきり楽しい経験を積んでから、ぼちぼち、社会の荒波へと歩を進めていくんです。
そっちが、私たち人間の心にとって、正しい順序です。
「働くのが怖い」お子さんが心配な親御さんへ
ここまでは、「働くのが怖い」と感じている若者さんに向けて、お伝えしてきましたが、読んでくださっている方の中には、
「うちの子が、働くのが怖いと言っている」
と検索してここに辿り着いた親御さんもいらっしゃるかもしれませんね。
「このままで、この子はどうなるんだろう」
「私が甘やかしてしまったんじゃないか」
そう言って自分を責める親御さんに、たくさんお会いしてきましたから、その不安、よくわかります。
まずひとつ、安心してください。
お子さんが「働くのが怖い」と伝えてくれたなら、それは、親御さんとの間にまだ信頼が残っているということです。本当に距離ができてしまった子は、もう何も言いません。「働きたくない」とすら、口に出さなくなります。ですから、こわいと言えるうちは、まだ大丈夫。
そして、お願いです。
「いつから働くの」「そろそろ動かないと」という言葉だけは、もう少しだけしまっておいてください。
理由は上記のとおり。今はその時じゃないからです。
代わりに、温かいご飯を一緒に食べる。短い世間話をする。
そういう「安心できる日常」をゆっくりと積み重ねてみてください。
ご家庭でのひきこもりの子どもさんとの過ごし方については、こちらの動画で解説しています。よかったら参考にしてみてください。
ソーシャルワーカーの黒岡さんが、動こうとしない子どもさんとどう接したらよいか、優しく説明してくれています:動こうとしない子どもさんとの接し方(YouTube)
こちらのインスタグラムでも、1分程度の短いリールで、「ちょっとしたコツ」も配信しています:ひきこもり|親御さんの相談ひろば(Instagram)
まとめ|自分の中の「怖い」と「楽しい」を信じて
「働くのが怖い」と感じるあなたに、最後にお伝えしたいことがあります。
怖いのは「弱さ」でも「甘え」でもありません。
あなたを守るための大切な感覚です。
だから、まだハローワークには行かなくてよいです。
行きたくないですよね?
その「行きたくない」という自分の感覚を信じてください。
そして、いま自分が「楽しい」「やりたい」と思えることを、まずは思いっきりやってください。
私たちのスローガン「楽しいことファースト」。
もし気に入ったら差し上げます。笑
ぜひあなたも使ってください。
そしてその次に、「そろそろお金稼ぎたいな」ってなったら、ぼちぼち、就労の仕方を考えましょう。
それからでも遅くはないです。
だってそれが、あなたにとってのタイミングだからです。
ぜひあなたの心のタイミングを信じて、大切にしてほしいと、岡山の山奥から願っています。
「働くのが怖い」から「働いてもいいかも」へ:人おこしシェアハウス
「楽しいことファースト」を実践してみたくなったら
まずは楽しいこと、そしてぼちぼち就労も。
そんなやり方が自分に合ってそうだなと思ってくれたら、「楽しいことファースト」の人おこしシェアハウス、いつでも見学できます。
見学は無料です
スタッフがお部屋や敷地内の設備をご案内して、気になることがあればご質問にお答えします。
ちなみに・・、福祉の支援機関のように、過去のことを根掘り葉掘り聞いたりはしません。(見学者向けの簡単な記入シートだけは記入をお願いしています)
LINEでリモート見学もできます(無料)
リアル見学とほぼ同じ内容で、敷地内、建物内をご案内して、ご質問にお答えします。
対面が恥ずかしい場合は、カメラをOFFにしておいていただいても大丈夫です。
資料も無料でお送りします
「家族に資料を見せて相談したい」あるいは「ご家族が資料をご本人さんに見せたい」などなど。
LINE/メール/郵送でお送りしますので、LINEやウェブフォームでご希望をお知らせください。
「楽しいことファースト」に賛同してくださる親御さんへ
まずは楽しいこと、そしてぼちぼち就労も。
そんなやり方がお子さんに合っていそうだなと思っていただけたら、「楽しいことファースト」の人おこしシェアハウス、いつでも見学できます。
(見学、資料請求については上記をご覧ください。)
月に一度の家族相談会
お子さんはまだ動けそうにない・・そんな時は、親御さんだけで「家族相談会」に参加してみてください。
- 同じ境遇の家族の話が聞ける
- この道40年のベテランカウンセラー水野先生のアドバイス
- 人おこしシェアハウスをチラ見
「うちの子だけがおかしいのかと思っていた」
「自分の育て方が悪かったんじゃないかと、何度も自分を責めてきた」
そんな話を、これまで数え切れないほどお聞きしてきました。
お子さんが少しずつ動き始めた方、まだ静かに待っている方、人おこしシェアハウスに入居している方、さらにはシェアハウスも卒業して次の一歩を踏み出した方、いろんな段階の親御さんがいらっしゃいます。
立派なアドバイスをし合う場ではありません。「うちはこんな時期もあってね」と、同じ道を通ってきた者同士でお茶を飲みながら話す——それだけの時間です。
その時間が、家に帰ってから「もう少し、自分のペースで待ってみよう」と思える静かな力になる、と多くのご家族から伺っています。
ここまで一人で抱えてきた道のりを、これからは少しだけ、誰かと並んで歩いてみませんか。
そしてゆくゆく、ご本人が「行ってみたい」と思える日が来たら、次の一歩もご用意しています。
ただ、それは今すぐじゃなくて大丈夫。まずは、親御さんがお茶を飲みに来るところから始めましょう。同じ思いを抱えてきたご家族が、これまで何組も通ってきた場所です。
NPO法人山村エンタープライズ|人おこしシェアハウス
代表理事 能登大次
この記事は、ひきこもり当事者の方やそのご家族に向けた情報提供を目的としています。医療的なアドバイスではありませんので、必要に応じて専門医にもご相談ください。
この記事では、行政では「ひきこもり」とひらがな表記されることが多いですが、親しみやすさを考え「引きこもり」という漢字表記も一部で使用しています。