コラム「ひきこもり支援の現場から」第1回

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人おこし事務局長の能登が、美作市社会福祉協議会の広報誌「はい!社協です」に連載させていただいているコラム「ひきこもり支援の現場から」。若者たちと過ごす日々の中で、感じること、学ばせてもらっていることを、少しずつコラムとして綴っています。社協さんに快く許可をいただきましたので、こちらのウェブサイトにも掲載させていただきます。

コラム「ひきこもり支援の現場から」第1回

「人おこしシェアハウス」で処方される魔法の薬とは?


美作市民のみなさん、作州武蔵カントリーの裏手で6年前に産声をあげた「人おこしシェアハウス」、ご存知ですか?

「よう知らんがあれじゃろ、ひきこもりやら、心の病気の子らが来よるとこじゃろ」

正解!!それです。笑

この6年間で、様々な事情により社会となじめずにいた16-44歳の若者64名が入居し、50名が卒業しました。滞在期間は、数ヶ月〜数年。卒業後の進路も、進学、就職、福祉サービス利用などさまざま。入居中に、共同生活を通じて人間関係経験を積み、地域での様々な体験を経て自信をつけ、成長し、そして巣立って行きます。

一体なにが彼らをひきこもらせ、そして、なにが彼らを立ち直らせたのか?10年近い若者支援経験を積んだ私の中でも、答えは見つかっていません。

でも、一つのデータを見てみると、そのヒントが見えてくるかもしれません。

下の図は、人おこし入居時の「希死念慮(自殺願望)」の強さを0-5の6段階で評価したデータと、その変化をグラフにしたものです。

ひきこもり支援コラム|希死念慮データ

入居時に死にたい気持ちが強い方が、実に3分の1。ところが、1年程度の人おこし暮らしを経て再検査をすると、そのうち8割の方がゼロにまで下がっているのです。「もう死んでもいいや」というところまで追い詰められていた若者たちが「やっぱり生きてみよう!」へとV字回復。一体これはどういうことなのでしょうか。

そう、私達が開発した「希死念慮回復の秘薬」を毎晩飲ませているから・・・ではありません。

彼らは、家族の元を離れ、似たような境遇の仲間たちと寝食を共にし、地域に出て体を動かし、そして困った時には近くの大人(スタッフたち)に助けてもらう、それだけの暮らしの中で、自然に、生きることへの信頼を取り戻してくれたのです。

「もう死んでもいいや」を「やっぱり生きてみよう!」に早変わりさせる「魔法の薬」に、少し興味を持っていただけましたでしょうか?

これから少しずつ、当連載コラムを通じて、この魔法の種明かしをしていきたいと思います。お楽しみに!

美作市社会福祉協議会発行「はい!社協です」 2022年5月号