人おこし事務局長の能登が、美作市社会福祉協議会の広報誌「はい!社協です」に連載しているコラム「ひきこもり支援の現場から」。若者たちと過ごす日々の中で感じることを、少しずつコラムとして綴っています。社協さんに快く許可をいただきましたので、こちらのウェブサイトにも掲載いたします。
コラム「ひきこもり支援の現場から」第18回
実践編⑤ 愛は縦横無尽に
「前回のコラムを読んで、口出ししたくなる気持ちをぐっとこらえ、『愛』の熱視線を注ぎ続けているのに・・あまり変わりません。愛が足りないのでしょうか?」
早速実行してくださりありがとうございます。「愛の熱視線」は十分伝わっていると思います。笑 でもまだ2ヶ月ですから、あきらめずにがんばって継続してください!
ただもしかしたら・・・わが子を想うあまり、うっかり別の方向の愛がおろそかになっているのかもしれません。
子どもは家庭内の空気にとても敏感です。例えば夫婦の関係が険悪になっていると、子どもはそのピリピリした空気感に不安を感じてしまいまいます。それだけでなく、特にひきこもっている子どもの場合は、
「自分のせいで、お父さんとお母さんの関係を悪くしてしまった」
と、自分を責めて傷ついてしまいます。
もちろん夫婦関係だけではありません。兄弟や同居の祖父母なども含めた家族間の不和も同様です。ただでさえ学校や職場での傷つき体験の積み重ねでひきこもっているのに、家庭内でもさらに傷ついてしまう。その上、そんな険悪ムードを避けるため、ますます部屋から出なくなり・・・、ひきこもりはさらに深く、長く、こじれていきます。
ですから、愛は子どもだけに注ぐのではなく、ご主人にも、奥さんにも、いやこの際ケチらずに(笑)、縦横無尽に!注いじゃってください。そうして家庭が愛に包まれて、楽しく幸せな空気で満たされてくると、子どもの気持ちはとても楽になります。自分を責める必要がなくなります。リビングに出やすくなります。出やすい環境を整えたら、あとは子どもの力を信じて待つだけです。
「そんな仏様のようなこと、できやせん」
そうですよね、一人でできることではなく、家族全員が関わる問題ですから。自分は変えられても、ご主人、奥さん、じいちゃん、ばあちゃん、上の子、下の子・・・家族とはいえ、みんなそれぞれの考え方がありますから。そこは少し、地道な戦いが必要になります。
でも実は、ひきこもりからの回復を目指す戦いは、このことに限らず、いつも地道で、先の見えない長期戦。焦らず、少しずつ、進めていかなければなりません。
ということで次回は、この長期戦を乗り切るコツについて、少しお話しできればと思います。

美作市社会福祉協議会発行「はい!社協です」 2025年3月号