- 生活リズムを整える
- 人との関わりを少しずつ増やす
- 専門機関に相談する
- 就労支援を受ける
むしろ多くの場合、本人はすでに限界までがんばった結果として、家にとどまるしかないところまで追い詰められています。
必要なのは「もっと(本人に)がんばれ」という本人の努力を促すようなメッセージではなく、次のようなメッセージが、親御さんや現在の環境の両方からしっかりと伝わってくることです。
- ここにいていい
- 無理をしなくていい
- あなたの存在そのものが大切だ
引きこもりから社会復帰を考えるのであれば、「本人をどう変えるか」ではなく、「家族や周囲がどう変わり、どんな環境を用意できるか」というサポートが大切になります。
この記事では、身近な方の引きこもりからの社会復帰を考える上で、重要な考え方と、具体的な方法、そして利用できる支援制度を紹介します。

【人おこし】は「学校に行けていない」「ひきこもっている」「コミュニケーションが苦手」など、生きづらさを抱える若者たちが全国から集い、社会的自立をめざすシェアハウス(自立支援の施設)です。開設2016年春~2025年春までの9年間で入居した方は108名(卒業者は90名・入居者18名)。就労支援の協力企業は約100社。岡山県の大自然に囲まれて、仲間たちと一緒に、そして支援のある安全な環境で、少しずつチャレンジ!さまざまな経験を積み、次のステップへと進んで行きます。
運営団体:NPO法人 山村エンタープライズ
後援:美作市
「ひきこもりの社会復帰=働くこと」ではない!

引きこもりからの社会復帰と聞くと、「早く働けるようにすること」「学校や職場に戻すこと」をイメージしがちです。
しかし、引きこもり状態が続いている若者にとっては、次のような思いが積み重なり、「世界そのもの」が危険で不安な場所に感じられていることが少なくありません。
- 家の外は怖い場所
- 自分は迷惑な存在かもしれない
- どうせまた失敗する
その状態のまま「早く外に出よう」「働く練習をしよう」と周囲が促すと、外の世界がますます「自分をジャッジする、こわい場所」に見えてしまうこともあります。
本来、社会復帰の目的は「社会の中で、自分らしく安心して生きていけるようになること」です。
就職や進学は、その途中で手に入る手段のひとつに過ぎません。
だからこそ、引きこもりの社会復帰を考える際に周囲が考えるべき最初のゴールは、就職させることや学校に戻すことではなく、 「この世界は、完全に敵ばかりの場所ではないかもしれない」と本人が少しずつ感じ直せるような、関係性と環境を増やすことです。
ひきこもりの社会復帰には「本人の努力」ではなく、「家族と周囲の大人の変化」が必要不可欠!

引きこもりの若者にとって、家族はいわば「最後の砦」です。
その最後の砦である、家族が「早くなんとかしないと」「周囲のみんなと同じようにしないと」「いつまでもこのままじゃいけない」という空気感を出していると、引きこもりの若者は家の中でも安心できなくなってしまいます。
家族が変わることは、引きこもりの若者本人にとって「世界が少しだけ優しくなった」と感じられる、最初のサインになります。
たとえば、次のような変化が重要です。
- 「まだ働けないの?」ではなく、「今ここにいてくれてうれしい」と伝える
- 他人との比較ではなく、「あなた自身」を見ようとする
- 「何をしているか」よりも「今どんな気持ちでいるか」に耳を傾けようとする
本人に直接言いにくければ、部屋の前に好きなお菓子をそっと置いておく、メモでひとこと伝える、などの方法でも良いでしょう。
大げさなことをする必要はありません。
引きこもりの若者にとって最後の砦である家族が、言葉や行動「認める・待つエネルギー」に少しずつ変えていくことから、関係性は変わり始めるのです。
ひきこもりの社会復帰は長期戦!ご家族が一人で抱え込まないことも大切
引きこもりの若者の社会復帰は、多くの場合「長期戦」になります。
そのなかで、徐々に追い詰められていくのは、実は引きこもりの若者を見守る家族の側であることも少なくありません。
- 自分たちの育て方が悪かったのかもしれない
- 何をしても空回りしてしまう
- 誰にも相談できない
そんな思いを抱え続けると、支える側のご家族自身が消耗してしまいます。
引きこもりの若者の社会復帰は、家族だけでは実現が難しいもの、という認識に改めてもらうことも実は重要なことの1つです。
「家族が次のような引きこもり支援につながること」が重要です。
- 自治体の家族教室
- 引きこもり当事者家族の会・自助グループ
- 支援機関での家族相談・家族面談
引きこもりの若者のご家族が気持ちを話せたり、経験を共有できる場に参加することで、次のようなことが少しずつ見えてきます。
- 他の家族も同じように悩んでいること
- 完璧な親でなくてもいいこと
- 距離の取り方にもコツがあること
引きこもりの若者を支援する側のご家族自体がさまざまな支援によって支えられ、気持ちに余裕を取り戻していくことで、ご家庭の空気は自然と柔らかくなり、それが引きこもりの若者本人にも伝わっていきます。
このように、「一人で抱え込まない」ということも、引きこもりの若者の社会復帰を実現させる上で重要な要素の一つなのです。
ひきこもりの若者の社会復帰のために家族ができる3つのこと

ひきこもりの若者の社会復帰のためにご家族や周囲の方ができることとしては、「がんばれ!」と本人の努力を促すことではなく、次の3つのように、「ここにいてもいいんだよ」「今のあなたのままでいいんだよ」というメッセージが伝わる接し方を心がけることです。
- 責めない・急かさない
- 小さな変化を一緒に受け取る
- 家族もひとりで抱え込まない
具体的にどのような方法で接していくべきなのか、詳しく解説していきます。
責めない・急かさない
「いつまで家にいるの?」「働かないとダメだよ」「同級生はもう就職しているのに」などといった言葉は、悪気がなくても、本人には「自分はダメな人間だ」「まだ自分は実力が足りない」「受け入れてもらえていない」というメッセージとして届いてしまうことがあります。
ひきこもり状態は決して「怠け」ではなく、限界までがんばってきた人が、これ以上壊れないために身を守っている状態なのです。
だからこそ、「ここにいてもいいんだよ」「今のあなたのままでもいいんだよ」というメッセージが伝わるようなまなざしや言葉かけが、とても大切です。
決して本人を責めたり、急かしたりするような言葉をかけてしまわないように注意しましょう。
小さな変化を一緒に受け取る
ひきこもり状態にある若者にとっては、次のような何気ない小さな行動一つひとつにも、大きな勇気が必要です。
- 家族と目を合わせる
- ドア越しに「うん」と返事をする
- リビングに数分出てくる
その一瞬を家族が見逃さずに、リビングに出てきたら「顔が見られて嬉しかった」と声をかけたり、ドア越しに「うん」と返事をしてくれたら「返事してくれてありがとう」と、結果ではなく「関わってくれた事実」そのものを受け取ることができると、 本人の中に「自分の存在を喜んでくれる人がいる」という感覚が少しずつ育っていきます。
変化を大きくしようとする必要はありません。
「昨日と同じでも大丈夫」「ちょっと違ったら、それも受け取る」くらいの姿勢が、安心につながっていくのです。
優しい大人と出会える「居場所」や「環境」を増やす
ひきこもりの若者本人にとって、「親以外の、責めない大人」と出会うことは、とても大きな転機になります。
- 叱ったり、評価したりしない
- できないことより、できていること・好きなことに目を向けてくれる
- 失敗しても居場所から追い出されない
そんな大人がいる場所に、少しずつ通うなかで、「外の世界にも、安心できる場所や人がいるかもしれない」という感覚が育っていきます。
それは、いわゆる「訓練」をがんばるためではなく、
世界全体の「安全度」をからだで感じ直すための時間でもあります。
ひきこもりの若者本人が自主的にこういった「居場所」や「環境」を増やしていくことは非常に難しいため、周囲で見守るご家族などが少しずつ、優しい大人と出会える「居場所」や「環境」を増やすきっかけを作っていくことが重要です。
公的な相談窓口や支援制度は「押し出す」ためではなく「一緒に考える」ためにある!

ひきこもりの若者の社会復帰を支える公的支援制度としては、次の3つがあります。
- 相談支援
- 生活支援
- 就労支援
ここからは、支援策について詳しく紹介します。
相談支援
ひきこもりの息子や娘をご家族が支援するにあたり、「何から手をつければよいのか分からない」と感じるのは、ごく自然なことです。
そんな時に利用できるのが、次のような自治体などの相談支援です。
- ひきこもり地域支援センター
- 自治体のひきこもり相談窓口
- 自立相談支援機関
これらの窓口では、精神保健福祉士や社会福祉士、臨床心理士などの専門職が、次のような項目を一緒に整理しながら、「今できそうなこと」「今はまだやらなくていいこと」を見極めてくれます。
- 今の状況や困りごと
- 家族の疲れや不安
- 本人の様子
目的は「すぐに動かすこと」ではなく、「これ以上傷つかないようにしながら、少しずつ可能性を広げていくこと」です。
本人が会うのが難しい場合は、家族だけで相談できる場合もあります。
生活支援
いきなり学校や仕事に戻すという考えではなく、その手前の段階として、本人の生活リズムをゆっくり整えていったり、家でも職場でもない「第三の居場所」を持ったり、人と関わる感覚を取り戻していく、生活支援もあります。
生活困窮者自立支援制度の中の、「自立相談支援」「就労準備支援」「居場所づくり事業」などでは、ひきこもりの若者が自分のペースで通いながら、日々の生活や人との関わりを少しずつ取り戻していくサポートが行われています。
ここでも大事なのは、「本人の努力や頑張り度」ではなく「本人が安心できる環境かどうか」です。
安心できない環境は、どれだけ良いプログラムが整っていても、本人にとっては負担になってしまいます。
私たちNPO法人山村エンタープライズが岡山県で運営する『人おこしシェアハウス』も、そんな「ひきこもりの若者が優しい大人と出会える居場所をつくる」生活支援のひとつです。
人おこしシェアハウスには、次のようにさまざまな背景を持つ若者たちが全国から集まり、田舎の落ち着いた環境で共同生活を送りながら、それぞれのペースで社会復帰を目指しています。
- 不登校
- ひきこもり
- 発達特性による生きづらさ
- 人間関係のつまずき
実際どんなスタッフが日々関わっているのかについては、次の動画をご覧ください。
『人おこしシェアハウス』で大切にしているのは、次の3つです。
- 誰にも、何も、強制されない自由な環境
- 失敗や休むことを許容される温かい環境
- 優しい大人に見守られている安心・安全な環境
日々の暮らしのなかでは、次のようにさまざまな活動を行っています。
- 料理やお菓子作り
- DIYなどのものづくり
- 農家や地域企業でのボランティア
- スクールドッグ、ホーススクールなど、動物との触れ合い
- ヨガ、アート教室、バンドなど文化活動
ただこれらの活動も、参加の仕方やペースは人それぞれです。
「やりたい時に、やれる範囲で」。
「今日は見ているだけ」があってもいい。
休む日があってもいい。
そうしたゆるやかな関わりのなかで、次のような感覚が少しずつ育っていきます。
- 自分にもできることがある
- 生きていたら楽しいことがあるかもしれない
- 優しい人、自分を受け入れてくれる人もいる
人おこしシェアハウスでは、優しい大人に見守られた安心な環境の中、たくさんの若者たちが自分のペースで、自分らしさを取り戻して社会に羽ばたいていきます。
また、たとえ興味があっても、急に入居を決断するのは難しいでしょうから、自分のペースでゆっくりと決めてもらっています。
- 短時間の見学
- 日帰り体験
- 宿泊体験(1泊〜1ヶ月)
ご本人だけでなく、家族の不安や疑問を一緒に整理する時間も、大切にしています。
就労支援
就労移行支援や若者サポートステーションなどの就労支援は、「本人を外に出すための支援」ではありません。
- 安心して通える
- 失敗してもやり直せる
- 事情を理解してくれる大人がいる
そうした環境のなかで暮らしていると、本人の中に「少し働いてみてもいいかもしれない」という気持ちが自然に芽生えてくることがあります。
そのタイミングで、本人のペースに合った次のような選択肢を一緒に考えていくのが就労支援の役割です。
- 短時間の実習
- 在宅ワーク
- 負担の少ない仕事
就労支援で大切なのは、「就職できたら成功」「続かなかったら失敗」ではないこと。
働くかどうかも含めて、その人の人生を一緒に考えてくれる大人や場があるかどうかが、いちばんのポイントです。
ひきこもりからすぐに社会復帰しなくていい!家族と、優しい大人と、一緒に考えていく

ひきこもりからの社会復帰は、「本人の根性」や「努力」で一気に解決できるものではありません。
むしろ、本人のがんばりをこれ以上求めないこと、安心して休ませてあげることこそが、ひきこもりからの回復の第一歩です。
- 家族自身が支援につながることで安心する
- 家族が本人を責めることをやめる
- 本人が落ち着いて自分を見つめることができる
家庭内にこうした好循環が生まれて初めて、「外に出てみたい」「学び直してみたい」「働いてみたい」といったひきこもりの若者の心の変化が生まれていくのだと、私たちは思っています。
私たちが岡山県北部の自然の中で運営する『人おこしシェアハウス』は、そんなひきこもりの若者が自分のペースでさまざまな経験を積み、その結果として外に出てみたい、学び直してみたい、働いてみたい、と次の場所に自分のペースで育っていく、そんな支援をする施設です。
現在18名の若者たちが、農作業や地域の仕事体験などをしながら、自分のペースで暮らしています。
もし今、ひきこもりのご家族をサポートされていて、「このままでいいのだろうか?」「どうサポートしていけば良いかわからない」と感じているのであれば、 「本人を変える方法」ではなく、「一緒にいてくれる大人や環境」を探すことから始めてみませんか。
人おこしシェアハウスを利用した方のご家族の声をいくつかご紹介します。
表情も明るくなったように思える。 波は有るものの体調も良さそう。 考え方が前向きになったと感じる。
引用元:参加者の声|ご家族編
入居前は表情は暗く、落ち着きがなくて、自分や親を責める言動が多かったです。特に不登校を後悔してその状態を親が放置したと怒っていました。
入居後にアルバイトを始めるころには落ち着いてきましたが、親に対して過去は気にしないと言いながらも怒っていました。
一人暮らしを始める頃になって、過去のことを思い出し、怒りたくなっても『こんなん、言っても意味ないし』と自分から、話を切り替えるようになりました。
今は、何かあれば連絡してくれ、こちらの電話にもすぐに出てくれます。人おこしを出て、話す相手がいなくて寂しいのかもしれません(笑)
親子関係は、かなり改善されました。
引用元:参加者の声|ご家族編
以前は常にイライラした様子の顔つきだったけど、暴言をはいたりという事はなくなり、顔つきもほぼ穏やかになり、今は家族との関係も良好だと思います。
引用元:参加者の声|ご家族編
他のご家族の声もたくさんいただいております。
お申し込み・ご相談は、どうぞお気軽にお問い合わせください。ご家族と一緒に、ゆっくりお話を伺い、これからのことを一緒に考えていきましょう。



