引きこもり支援
選び方を「現場のリアルな目線」で解説
こんにちは、「ひきこもりの若者と過ごして10年」の能登です。
(筆者:能登大次 NPO法人山村エンタープライズ 代表理事)
このページにたどり着いたあなたは、「引きこもり 支援」で検索して、既にあちこちのウェブサイトを見て回り・・・、そろそろ、ありきたりの情報に飽き飽きしてきた頃ではありませんか?笑
「教科書通りの情報はわかったけど、本当に今の自分の状態に合った支援がどれなのか・・」
このコラムでは、そんなあなたに、たくさんの支援機関・医療機関などと関わりながら、ひきこもりの若者たちを10年間支援してきた私が、ひきこもり支援の選び方を、「現場のリアルな目線」でお伝えしたいと思います。
ちなみに私は岡山県の山奥で、「ひきこもり」や「不登校」と呼ばれる若者たちが集うシェアハウス「人おこし」を運営しています。10年以上、数百人の若者と親御さんに出会ってきました。
私のところに相談に来られたみなさんは、自分に合った支援を見つけるまでに大変な紆余曲折を経たり、はたまたあちこちをたらい回しにされたり、ときにはどこにも繋がれず長年一人で抱えてこられたり・・
でもこのコラムにたどり着いたみなさんは大丈夫!
そんなことにならないように、できるだけわかりやすく、みなさんの状況に合った「ひきこもり支援」の選び方のコツを、お伝えできればと思います。
― もくじ ―
おすすめの「ひきこもり支援」早見表
「ひきこもり支援」には、いろんな種類があります。
まずは、主な支援の種類をざっと表で整理しつつ、次の項では、一つずつ私の目線で解説していきたいと思います。
表では、ご家族、ご本人さん、それぞれに向けた「おすすめ度」を「◎、○、△、×」の4段階でざっくり示しています。全部読むのは大変という場合は、気になる項目から読んでみてください。
| ひきこもり支援の種類 | 支援機関名 | お勧め度 | |
|---|---|---|---|
| ご家族 | ご本人 | ||
| 自治体の「ひきこもり相談窓口」 | 福祉課等の窓口、ひきこもり地域支援センター、社会福祉協議会、等 | ○ | △ |
| 医療機関 | 心療内科、精神科 | ○ | ○ |
| カウンセリング | 民間のカウンセリングルーム、医療機関の心理カウンセリング等 | ○ | ○ |
| 家族会 | ひきこもり家族会・親子教室等 | ◎ | ー |
| 居場所 | ひきこもり当事者向けの居場所、フリースペース | ー | ◎ |
| 就労支援 | 若者サポートステーション、就労移行支援、等 | ー | ○ |
| 引き出し屋 | 高額の費用で強引に引っ張り出す民間サービス | × | × |
自治体の「ひきこもり相談窓口」【ご家族は試す価値あり!】
ひきこもりの子どもを持つご家族が最初に相談に行く窓口としてはおすすめです。
ただ、多くの場合、窓口担当者は専門家ではないので、ご家族の気持ちを「理解してくれる」「共感してくれる」を期待すると、期待はずれになってしまうかもしれません。
でも行政には行政の強みがあります。地域の支援資源の情報は把握している可能性が高いので、「うまく使う」くらいの気持ちで相談するのがよいと思います。
自治体の「ひきこもり相談窓口」の上手な使い方【ご家族編】
今のご家族やご本人さんの状態を伝えて、利用できそうな支援を幅広く提案してもらうのがよいと思います。
ただ「2ヶ月前までは観光課にいたので・・」みたいな職員もいますし、知識や対応は担当者によってかなりムラがあります。
もちろん、少し相談してみて「この人なら話せそう」という感覚が掴めたら、しっかり相談してみるのもよいと思います。
ちなみに、「ひきこもり地域支援センター」や社会福祉協議会が運営する窓口には専門家が常駐していて、ある程度の寄り添い支援をしてくれる場合もありますから、一度訪問してみる価値はあると思いますよ。
自治体の「ひきこもり相談窓口」の上手な使い方【ご本人編】
あまり共感力のない担当者にあたってしまうと、事務的に扱われてしまい、さらに傷ついてしまう可能性もありますから、ご本人さんが直接相談に行くのは、基本的にはあまりおすすめしません。
ただ、だいぶ元気になってきて、少しくらいのことには動じず、「今の自分に合った居場所はないかな」「就労に向けて準備ができるボランティア活動など情報が知りたい」そのくらい具体的な目的を持って相談に行くのはありかもしれません。
医療機関(心療内科・精神科)での「不登校」「ひきこもり」相談
あくまでも個人的な意見ですが、「不登校」「ひきこもり」からひとっとびに医療機関、という流れはあまりお勧めではありません。医療を否定するわけではなく、医療には医療の強みがあるので、その強みを活かした使い方をした方がよい、という意味です。
というのも、医療というのは基本的には本人の心身の問題を見つけて「治療」することを目指すものだからです。それに対して、現在の「ひきこもり」に対するスタンダードな対応方法は、「治療」ではなく「環境を整える」ことが最優先とされています。言い換えれば、ひきこもりの多くは環境を整えることで改善する、ということです。
私たちの運営する「人おこしシェアハウス」でも、まずは「安心」「安全」「楽しい」を最優先にした暮らしの中で、必要に応じて医療機関と連携する形を取っています。
つまり、まずは環境を整えた上で、ご本人さんの状態をよく見て、必要に応じて医療を活用するのが、医療の強みの最適な活かし方、と言えるでしょう。
ひきこもり支援に医療を活用した方がよいと思われる例
ただし、例えば以下のような場合は、医療機関受診を検討した方がよいかもしれません。
- 不眠が原因で精神状態が悪化し、自殺企図や暴力に至っている。
- 幻聴や幻覚が出ていたり、現実と妄想が混ざった発言や、奇妙な行動が見られる。
- うつ症状が強く、自殺のリスクが高まっている。
でも実際「受診すべきか・・」の判断、難しいですよね。そういった判断も含めて、先に信頼できる引きこもり支援者とのつながりが持てると心強いと思います。
民間のカウンセリングルーム、医療機関の心理カウンセリング
もしご家族やご本人さんが、強いストレスを抱えていて「とにかく誰かに話を聞いてほしい!」という状態であれば、カウンセリングを活用するのはありだと思います。特に、ひきこもり専門のカウンセラーであれば、単に話を聞いてくれるだけでなく、ご本人さんの状況に応じて、ご家庭でできる対処方法など、適切なアドバイスをしてもらえるはずです。
ひきこもり家族会・親子教室【ご家族にイチオシ!】
ひきこもりの子どもを抱える親御さんに、まずお勧めしたいのが「家族会」です。
というのも家族会には、ご本人さんがひきこもりから回復するのに最適な環境を整えるために必要な要素がすべて含まれているからです。一つずつ解説していきますね。
先輩家族に相談できる
みなさんと同じような境遇を経てきた「先輩家族さん」たちに相談することができます。今まで溜め込んできた辛い思いを聞いてもらえるというだけでも、専門のカウンセラーさんに相談するのと同じような効果がありますし、なにより先輩家族さんは、同じ境遇を経ていますので、本当の意味であなたの気持ちに共感してくれます。そういった同じ境遇の「仲間」に話を聞いてもらうだけで、「救われた」「気持ちが楽になった」ご家族は本当に多いです。
そして不思議なことですが、こうしてご家族の気持ちが楽になると、その安心感は自然にご本人に伝わって、ご家庭内の緊張が少しずつ緩んでくるんです。これこそが実は、引きこもりからの回復にとって最大の「治療」だったりします。
実例と情報の宝庫
家族会は、みなさんと同じようにひきこもりの子どものことで長年悩んできた家族の「実例集」みたいなものです。
「3年前に息子から○○と言われてしまって。でもその時のことがきっかけで・・」
「娘のこういう行動がおかしいなと思って医者に相談したら・・」
「息子が就職すると言って○○という有名な事業所に相談に行ったけど、こんな扱いを受けてしまって・・」
「そういうことで相談するなら、ここがお勧めかも。とても話しやすくていい雰囲気でしたよ。」
などなど、生きた実例と情報の宝庫です。こういった「生きた情報」は、行政では手に入りません。
「ひきこもり対応」の実践学習
先輩家族さんたちは、長年苦労に苦労を重ねて、いろんなことを試し、そしてたくさんの知識を持っています。
中には、その成果として子どもさんが少しずつ元気になり、就労に結びついた、今では楽しく学校に通っている、そういった「成功例」となるご家族もおられるでしょう。そういった先輩たちから学んだ知識を持ち帰り、ご自宅で実践し、そして次の家族会でその結果を報告し、また次のアドバイスをもらう。そんな風にして、家族会で相談しながらトライ&エラーを重ねることができます。
支援機関との繋がり
家族会によっては、ひきこもりの子どもを持つ家族同士で集まるだけでなく、定期的に専門家を招いたり、支援機関の方を呼んでどんな支援をしているかを紹介してもらったり、そういった勉強会を定期的に開催している会もあります。そういった家族会であれば、知識や情報も得られますし、信頼できる支援機関とのつながりができるきっかけにもなるでしょう。
居場所【ご本人さんは試す価値あり!】
もしご本人さんが「そろそろ家から出て通える先があったら・・」という気持ちになっているようでしたら、最初の通い先として居場所はお勧めです。多くの居場所は、なにもせずに通うだけ、というあり方も許容してくれますし、ゲームやちょっとした作業などで他の人と交流する練習をすることもできます。スタッフとおしゃべりするだけでもいいかもしれません。
「とりあえず通う先があることで、生活リズムを整えたい」
「とにかく家の居心地が悪いので、逃げ場が欲しい」
「そろそろ誰かと交流してみたい」
「就労を目指しているが、まずは体力をつけないと」
今の自分の状態に合わせた使い方をしたらよいと思います。
ただ、一言で「居場所」と言っても運営母体も運営ポリシーもさまざまです。合う合わないはあると思いますから、見学に行ったり、体験に行ったりして、判断してみてください。
就労移行支援・サポステ【ご本人さんは試す価値あり!】
もしご本人さんが「ただ遊ぶだけの居場所ではもう満足できない」「そろそろ就労に向けて動きたい」そういう気持ちが高まってきているけど「ハローワークはちょっとハードル高すぎ」と感じているなら、就労移行支援やサポステ(若者サポートステーション)はよい選択肢になると思います。
ひきこもり支援における就労移行支援の利用
就労移行支援は、一人一人の状況に合わせて就労に向けたさまざまな準備のプログラムを提供してくれますし、その上で、企業の見学や企業での実習(体験就労)なども同伴してサポートしてくれる上に、就職活動から、就労後のアフターサポートまでしてくれます。
ただこちらは、国の定める福祉サービスなので、利用するためには自治体から「障害福祉サービス受給者証」を発行してもらう必要があり、そのためには医療機関の発行する診断書が必要だったり、相談支援事業所に支援計画を組んでもらう必要があったりで、ちょっとハードルがあります。でも大丈夫、就労移行支援事業所に相談すると、その辺りの手続きも含めてサポートしてもらえると思います。
ひきこもり支援における若者サポートステーションの利用
またもし「就労移行支援はハードルが高い」「手続きが大変そう」「診断書はちょっと・・」ということであれば、サポステ(若者サポートステーション)がよいかもしれません。サポステであれば、受給者証なども必要ないので、気軽に相談できますし、ご本人さんの今のステージに合う形で、就労に向けたサポートをしてもらえると思います。
高額な「引き出し屋」【絶対ダメ!!】
「このまま放っておいたら、あっという間に8050になっちゃいますよ」
「ひきこもりは、早く対処した方が、早く回復します」
「お父さんの定年までには、必ず働けるようにさせます」
そんな風に、焦りや不安を煽って高額な対価を取り、強引にお子さんを引っ張り出すような「ひきこもり支援」は、お勧めしません。それどころか私は「絶対に利用しないで欲しい」と思っています。以下に理由を説明しますね。
引き出し屋をお勧めしない理由①「親子の信頼関係を破壊する」
親といえども、嫌がる子どもを強引に連れ出すのは人権をふみにじる行為です。それは、子どもの親に対する信頼を壊滅的に損ない、子どもはそのことで親を「一生恨む」ことになるでしょう。これは取り返しがつきません。
引き出し屋をお勧めしない理由②「傷つき体験の上塗り」
ひきこもりの原因は、甘えではありません。そのことは学術的にもはっきりしています。
その原因はむしろ「傷つき体験の積み重なりによるエネルギー低下」とされています。ただでさえ傷つき体験が重なっているところに「親が業者を雇って強引に家から連れ出す」なんていう致命的な傷つき体験を上塗りするなんて・・・到底お勧めできません。
引き出し屋をお勧めしない理由③「本当の目的は本人の幸せ」
業者は「早くなんとかしないと」という親御さんの焦りや不安を煽って契約を迫ります。でも親御さんの願いは本来「子どもの幸せ」のはずです。自分の意思に反して強引に引き出され、働けるようなコンディションじゃないのに働くことを強要されて、それで就労できたとしても、その先に子どもさんの幸せな未来が開けているのでしょうか。焦りや不安に突き動かされて、一番大切なことを見落としてしまわないように、心から願ってやみません。
ひきこもりが回復する田舎のシェアハウス
最後に、私たちが運営する「人おこしシェアハウス」を紹介させてください。
「家族相談会」を毎月開催
同じ境遇のご家族同士でお話をしつつ、この道40年以上のベテランカウンセラーに相談することができます。
医療機関と連携
日本原病院心療内科と連携し、定期健康診断、定期ケースカンファレンスなどを通じて、何かあればいつでも医師や心理士に頼れる体制になっています。
就労支援
自治体(美作市)と連携し、100社以上の地域企業の協力を得て、企業見学、就労体験、超短時間アルバイトから正社員雇用まで、就労の寄り添いサポートを実施しています。
そしてなにより・・・
シェアハウスそのものが「居場所」「コミュニティ」
私たちはこの10年間で100人以上の若者たちと生活をともにする中で、彼らからたくさんのことを教えてもらい、
- 彼らが本当に安心していられる居場所になるように
- 彼らがつながりの中で生きていけるコミュニティになるように
- そして彼らの幸せにつながる自立ができるように
このシェアハウスを運営してきました。
その成果はデータでも示されています。
- 希死念慮が高い状態で入居した方の90%は、半年〜1年後の再検査で希死念慮が下がっていただけでなく、そのうち約8割は「希死念慮:0」まで回復。
- これまで人おこしシェアハウスに入居した方の約20%が、シェアハウス近隣で一人暮らし中。(=私たちのコミュニティの中で生きていくことを選んでくれている)
私は、シェアハウスに来てくれた若者たちと過ごす中、ひきこもりからの回復に必要なものは、究極、「心強さ」だと確信しました。そしてその心強さを形作るものは、周囲の人間の「優しさ」だということも確信しています。
「優しさ」に包まれて「心強さ」を手に入れたからこそ、「死にたかった」彼らが希望を取り戻してくれたのだと思いますし、シェアハウス卒業後もこの近くで暮らすことを選んでくれているのだと思います。
そんな私たちのシェアハウスは、こんなところにある、こんなシェアハウスです。
よかったら「人おこしシェアハウス」のホームページ、見てみてください。
ひきこもり支援の選び方|まとめ「急がば回れ」
最後に一つだけ。ひきこもりの支援機関を選ぶ際に大切にしていただきたいことは、焦らないこと、です。今のご家族に、今のご本人に、合う支援を、焦らず、ぼちぼち、探してください。
焦るとつい「自立」「就労」に飛びついてしまいます。でも、ひきこもり状態にある若者の多くは、「自立」「就労」からは、2段階も3段階も前の段階にあります。
「自立」「就労」よりも先に、まずは「安心」「楽しい」「優しい」そういう心地よさを頼りに、選んでみてください。それが満たされてくると、あとは自然に次の道が開けてきます。
逆にそこが満たされていないのに、「自立」「就労」をご家族が強要したり、ご本人が頑張りすぎてしまうと、結果的に次の道は遠のいてしまいます。
そう、引きこもり支援は、まさに「急がば回れ」なんです。
人おこしシェアハウスにやってきた100人以上の若者たち、そしてシェアハウスを卒業して笑顔で遊びにきてくれるたくさんの若者たちが、それを証明してくれています。
人おこしシェアハウスの卒業生たちの生の声、よかったら聞いてみてください:Youtube|人おこしシェアハウスOBインタビュー
この記事は、引きこもりやひきこもり状態にある方、そのご家族に向けた情報提供を目的としています。医療的なアドバイスではありませんので、必要に応じて専門医にご相談ください。
この記事では、行政では「ひきこもり」とひらがな表記されることが多いですが、親しみやすさを考え「引きこもり」という漢字表記も使用しています。