人おこし事務局長の能登が、美作市社会福祉協議会の広報誌「はい!社協です」に連載中のコラム「ひきこもり支援の現場から」。若者たちと過ごす日々の中で感じることを、少しずつコラムとして綴っています。社協さんに快く許可をいただきましたので、こちらのウェブサイトにも掲載いたします。
コラム「ひきこもり支援の現場から」第3回
「魔法の薬」を飲まにゃいけんのは・・誰?
これまで、自殺願望や暴力がなくなるなど「魔法の薬」の効能をいくつか見てきました。
でもおそらくみなさん疑問だと思います。「魔法の薬」の何がそんな効果を発揮するのか?
実は、私もはっきりとはわからないんです。そこで、本人たちに聞いてみました。
その結果が、下の図です。
「Q3. 人おこしの何がよい影響を与えましたか?」への回答を見てください。
まとめると「親元を離れ、わかってくれる仲間がいて、困ったら誰かに助けてもらえる」ということです。そう、これって、なんということもない普通の環境ですよね。
またアンケートの最後に「人おこしの良いところ」を聞いてみたところ、「全体的な人のよさ」「優しい人が多い」「スタッフに対する安心感」など、「人の優しさ」に関わる回答が大多数を占めていました。
たぶん彼らはこれまで、「甘えるな」「もう大人だろうが」「自分で考えろ」そんな言葉を周囲の大人たちからかけられてきたのではないでしょうか。
それらが間違っているということではありません。でも、彼らが前に進むために必要だったのは、それらの言葉ではなかったんです。
今の自分のことを理解してくれて、優しくサポートしてくれる人、一緒に歩いてくれる人、が必要だったんです。
おそらく周囲の大人たちが、「ひきこもりは病気だ!甘えだ!怠けだ!」と思っている間は、彼らは部屋から出てこないでしょう。
でも「周囲の私たちの接し方を変えた方がいいのかな」いやそれどころか「これは私たちの側の問題なのでは・・」と思い始めた瞬間から、変わってくるかもしれません。
もしかしたら・・・「魔法の薬」を飲まにゃいけんのは彼らではなく、私たちの方なのかもしれませんね。
美作市社会福祉協議会発行「はい!社協です」 2022年9月号