コラム「ひきこもり支援の現場から」第4回

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人おこし事務局長の能登が、美作市社会福祉協議会の広報誌「はい!社協です」に連載中のコラム「ひきこもり支援の現場から」。若者たちと過ごす日々の中で感じることを、少しずつコラムとして綴っています。社協さんに快く許可をいただきましたので、こちらのウェブサイトにも掲載いたします。

コラム「ひきこもり支援の現場から」第4回

勇者よ、ドラゴンを倒せ!(布の服とこん棒で・・)


「人おこし」についてお話すると「大変な仕事ですね」と励ましていただけることがよくあります。ひきこもりについての理解が広がっているんだなと嬉しく思います。

でも、私の大変さなんて、人おこしに入居しているあの子達の大変さに比べたら、足元にも及びません。

私はもうこの歳ですから、だいぶ鈍感になってだいたいのことは適当に受け流せますし、経験の積み重ねである程度の自信もあります。実際できることも多いので、いざというときの手数もそろっている上に、家族の愛情や知人友人にバックアップされていて・・・武器も防具もたくさん持って戦うことができます。

それに比べてあの子達は、多感な時期ですから、あらゆることに敏感で感情も不安定。そして多くの場合、家族との関係が悪く、頼れる友達もいません。経験不足で自分に自信がありませんので、いざとなったら手持ちのカードはプライドだけ。ドラクエで言ったら「レベル1、布の服、こん棒」で、モンスターだらけの荒野に放り出されたような状態です。

「モンスター」と言っても実際には、「布団を洗濯機で洗ってしまって水浸し」とか「切符の買い方がわからず電車に乗れない」とか・・・私達からしてみれば簡単なことばかりですが、今まで社会と関わった経験がない彼らにとっては大冒険の連続です。

「勇者のくせにドラゴンにも勝てんのか!」って言われても、「レベル1」「布の服」じゃ・・厳しいですよね。だからその彼らを、レベル47で鎧を装備した私が付かず離れず見守りながら、いざとなったら影から弓矢をピュッ!ゆーても敵は、わしらにとっては雑魚ばかりですから楽勝です。笑

もしみなさんの身近でそういう若者を見かけたら、「あら、布の服で大冒険中の勇者さんね」と、優しく見守ってあげてください。そうしたら彼らも少しずつレベルアップして、近い将来、私達の地域社会をモンスターから守ってくれる、立派な勇者に成長してくれるに違いありません。

美作市社会福祉協議会発行「はい!社協です」 2022年11月号