コラム「ひきこもり支援の現場から」第6回

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人おこし事務局長の能登が、美作市社会福祉協議会の広報誌「はい!社協です」に連載中のコラム「ひきこもり支援の現場から」。若者たちと過ごす日々の中で感じることを、少しずつコラムとして綴っています。社協さんに快く許可をいただきましたので、こちらのウェブサイトにも掲載いたします。

コラム「ひきこもり支援の現場から」第6回

ラスボスの倒し方


人おこし卒業後、一人暮らしを始めて3ヶ月のAくんが、遊びに来てくれました。久しぶりに話しをしていると・・

収入はまだ月5万程度なのに、8万円もするゲームを買って毎晩インターネット上の友達と遊んでいるそうです。

実はAくん、生活費の半分は親からの仕送りに頼っていて、まだまだ仕事も増やさにゃいけん、資格も取らにゃいけん・・そんな状況なのに、高価なゲームを買って、毎晩ゲーム三昧って・・・

あなたがAくんの親なら当然どやしつけたくなりますよね。いやこればっかりは、さすがにドラクエに例えても無理でしょ!って思われましたか?笑

ではダメ元で・・試してみましょう。

これまで数々の若者たちの挑戦をそばで見てきました。彼らはその挑戦の中で「生活力」「人間関係」「収入」など様々な課題を乗り越えていきますが、私はその中でも「不安との戦い」こそがラスボス(=最強の敵)だと思っています。若者たちはほぼ例外なく、「働けるようになるだろうか」「家族を持てるだろうか」といった具体的な不安とともに、常に「漠然とした不安」につきまとわれています。

この敵は、ラスボスですから、強いです。そう簡単には倒せません。場合によってはレベル48の私だって、負けそうになることもあるくらいです。もちろん仲間の力も借りにゃいけんですし、少し奮発してでも強力な防具や飛び道具なんかも買っておいた方が無難です。だって致命的なダメージを受けてしまったら、強い魔法(例:抗不安薬)を使わなければなりません。魔法は当然MPを削ります(例:副作用、依存性)。そしてこの戦いに負けてしまうと・・・取り返しのつかない病を一生抱えて生きていくことになります。これは誰もが望まないエンディングです。残念ながら人生にはリセット(やり直し)機能はついていないのです。

さてそろそろAくんに話しを戻しましょう。

8万円のゲームってもしかして?オンラインの友達ってもしかして!!そう、Aくんは毎晩、立派に戦っているんです。仲間とともに。少ない収入の中から必要な武器を買い揃えて。 勇者Aくんの「最強の敵」との戦い。どやしつけるどころか、応援したくなってきませんか?

美作市社会福祉協議会発行「はい!社協です」 2023年3月号