コラム「ひきこもり支援の現場から」第7回

ひきこもり支援コラム|トップタイトル

人おこし事務局長の能登が、美作市社会福祉協議会の広報誌「はい!社協です」に連載しているコラム「ひきこもり支援の現場から」。若者たちと過ごす日々の中で感じることを、少しずつコラムとして綴っています。社協さんに快く許可をいただきましたので、こちらのウェブサイトにも掲載いたします。

コラム「ひきこもり支援の現場から」第7回

「ダメ、絶対!!」は、ダメ!?


ある夜の出来事。Aくんが、先輩Bくんを乱暴な言葉で挑発し続けたところ、いつも温厚なBくんもさすがにイラッとして、足でAくんを小突いてしまったのです。
その途端にAくんはいきりたち「暴力は絶対ダメですよね。警察呼んでやる!」と。その場はいさめたもののその翌日、今度はAくんのかつての「支援者」さんから怒鳴り込みのお電話が。「そちらのシェアハウスは暴力を肯定されてるんですか?どんなに小さくても暴力は許されませんよ。」といった趣旨です。

私ももちろん暴力を肯定しているわけではありません。ただ、若者がのびのびと成長するには「バッファ(ゆとり/遊び)」が必要だと思っているんです。
若者は完成形ではなく成長途上にあります。知識不足、経験不足、実力不足。判断を間違うことも、感情に負けてしまうこともあるでしょう。でも今の社会は、そんな若者にまで「正しさ」を要求しようとしています。将来の社会を担ってくれる人材・人格が健全に育まれるためには、彼らのそういった未熟さをある程度受け入れ、見守って経験を積ませてあげられるような、社会の側のゆとりや懐の深さが必要なのではないでしょうか。「バッファ」とは、そういった社会のゆとりのことです。

もちろん「正しさ」はとても大事です。でも「若者が成長する」ことには、計り知れない可能性があります。「正しさ」のネジを少しだけ緩めてみるだけの価値はあるのではないでしょうか。

法律やルールなど、明確なラインを持って白黒を判断するのは簡単です。VTR判定で「線を超えてますね。はい、アウト。」そんなことは機械でもできます。
でも長い目で、広い目で、しなやかに、そして愛を持って(!)対応すること、それは私たち人間にしかできないことです。
だから「バッファのある社会」というのは「人間味のある社会」のことで、そういう社会はきっと、誰にとっても居心地がよくて、多様な人々が参加できて、子どもや若者をのびのびと育んでくれると思うのです。そんな社会になったらいいな、って思いませんか?

さてその後。AくんがB先輩に投げかける言葉はいまだに乱暴です。でもなぜか・・2人は今夜も一緒にゲームをするのです。

美作市社会福祉協議会発行「はい!社協です」 2023年5月号