人おこし事務局長の能登が、美作市社会福祉協議会の広報誌「はい!社協です」に連載しているコラム「ひきこもり支援の現場から」。若者たちと過ごす日々の中で感じることを、少しずつコラムとして綴っています。社協さんに快く許可をいただきましたので、こちらのウェブサイトにも掲載いたします。
コラム「ひきこもり支援の現場から」第11回
目指せ!「みんなのホームタウン」
人おこしシェアハウスに入居して数ヶ月のAさん。先日新幹線に乗って実家に帰省したところ、どうも居心地が悪い。自分の部屋のはずなのに自分の部屋じゃないみたい。結局落ち着かなくて、早々に切り上げてシェアハウスに帰ってきたら、なんだかほっとしたそうです。
本人は、実家が文字通り「実家」になったというちょっと面白い表現をしていました。つまりシェアハウスが彼女にとって「普段暮らすおうち=ホーム」になったということですね。たった数ヶ月ですが、こちらでの人間関係に「仲間」という意識が芽生え、その中に自分の「居場所」ができて、そして「ホーム」になったんだと思います。
日々彼女の相談に乗っている私は、彼女の心に大きな空洞があることを知っています。でも「一人じゃない」と彼女の心が自然に感じられる場所を手に入れたことで、その空洞は確実に埋まり始めています。これが、「仲間」「居場所」「ホーム」の力です。
だからこそ、人おこしシェアハウス入居者の多くは、卒業後も、実家から遠く離れたこの地で一人暮らしすることを選んでくれるのだと思います。
データで見てみると(図表)、これまでシェアハウスを卒業した方の3分の1以上が近隣で一人暮らしを始めています。さらにシェアハウスに半年以上滞在した方に限れば、なんと半数以上です。つまり・・・シェアハウスが彼らの「ホーム」になり、そして次は、ここ美作市が彼らの「ホームタウン」になったのです!
残念なことに、地域の共同体が子ども・若者を見守り育むという機能をほぼ失ってしまった現代日本。子ども・若者を巡る問題は、孤立した各家庭が抱え込み、誰にも頼れないまま、負のスパイラルへ・・。そういった子ども・若者たちには、「仲間」も「居場所」も、安心できる「ホーム」もありません。
でも、そんな日本の片隅に、若者たちが「ホーム」と思ってくれるコミュニティを再建できるかもしれない。そんな夢を、でも手応えのある夢を、最近は見るようになりました。 そしてそれは、彼らだけの「ホーム」ではありません。私も、みなさんも、そして私たちの子どもや孫も、誰もが安心できる居場所、「みんなのホームタウン」です。なんだかわくわくしてきたそこのあなた!ぜひ一緒に夢を追いかけましょう。
美作市社会福祉協議会発行「はい!社協です」 2024年1月号