人おこし事務局長の能登が、美作市社会福祉協議会の広報誌「はい!社協です」に連載しているコラム「ひきこもり支援の現場から」。若者たちと過ごす日々の中で感じることを、少しずつコラムとして綴っています。社協さんに快く許可をいただきましたので、こちらのウェブサイトにも掲載いたします。
コラム「ひきこもり支援の現場から」第12回
シェアハウスに怪獣出現!!
冬の気配が迫る頃、シェアハウスに一頭の怪獣が出現し、シェアハウス内は一時騒然と・・笑顔に包まれました!実は入居者の1人が、普段着としてピンク怪獣のきぐるみを着るようになったのです。常識で考えると「変な人」です。笑 でもここではみんなに可愛がられ、堂々と怪獣暮らしを楽しんでいます。
これは「ありのままの自分を出しても受け入れてもらえる」という周囲の人々への信頼があるからできることです。
常識やルールに合わせることを求める学校文化や会社文化。そして今やその文化は家庭内にも入り込んでいます。素直な子ども・若者たちは、本当の自分を押さえつけて、環境に合わせようと努力します。せめて家庭だけでも自分らしさを出せればよいですが、それもできなくなると・・もはや彼らには自分らしくいられる場所がありません。これが「居場所がない」という言葉の本質です。
こうして彼らは、表面的には「いい子」になり、内面には誰にも見せられないストレスを蓄積しながら大人になっていきます。その代償が、どこで、どういう形で表出するか、それはわかりません。
「おとなしい普通の子でした」少年犯罪のニュースではお決まりのセリフ。そして我が国のひきこもりは今や146万人、世界有数の精神病大国・自殺大国です。
でもだからといって、誰もが「ありのまま」では親や学校の先生が大変、会社のコンプラが・・。そうなんです。つまりこの社会は、管理する側の都合で、子ども・若者の「ありのまま」を制限し、居場所を奪っているのです。そしてその結果としての「犯罪」「ひきこもり」「精神病」そして「自殺」。管理しきれず、もてあます有様。
それならば、まだかわいい「子どもちゃん怪獣」のうちに、受け入れてあげればよかったのではないでしょうか。会社では難しくても、小学校では、幼稚園では、そして少なくとも家庭内では、「管理」より「ありのまま」を優先してあげられないものでしょうか。
大変かもしれませんが、大人が知恵をしぼって力を尽くせば・・。それくらいの価値のあることではないでしょうか。むしろそれ以上に価値のあることってあるでしょうか?
この社会の優先順位の倒錯。その異常さに気づかない大人の怠慢。その倒錯と怠慢が生み出したゴジラがいま、巨大化して社会を脅かしています。 約束しましょう。人おこしのかわいいピンク怪獣は、決してゴジラにはなりません。
美作市社会福祉協議会発行「はい!社協です」 2024年3月号