人おこし事務局長の能登が、美作市社会福祉協議会の広報誌「はい!社協です」に連載しているコラム「ひきこもり支援の現場から」。若者たちと過ごす日々の中で感じることを、少しずつコラムとして綴っています。社協さんに快く許可をいただきましたので、こちらのウェブサイトにも掲載いたします。
コラム「ひきこもり支援の現場から」第15回
実践編②あったかお粥の作り方
前回、風邪で熱が出るのと同じように「必要があって」ひきこもっているというお話しをしました。
熱が出るのはウイルスと戦うため。ではひきこもりは何と戦っているのでしょう?
我が子が苦しむ姿を間近で見ていたら、気になりますよね。ウイルスを突き止めて、やっつけてあげたくなるのは当然です。
「学校・職場でなにかあったのかしら・・」
「まさかイジメ?」
「パワハラを受けたんじゃ?!」
いろんな心配が頭をよぎります。
でも本人に聞いてみても、多くの場合、はっきりした答えは返って来ません。なぜでしょう。実は・・・彼等自身にもわかっていないから、なんです。
近年の研究で、少しずつひきこもりのメカニズムがわかってきています。それによると、上に挙げたような人間関係上の問題が「きっかけ」になっていることはあるものの、ひきこもりを引き起こす主な原因は「エネルギーの低下」と定義されています。社会での様々な失敗、傷つき体験、心身の疲労などが蓄積しているのに、休めない、休んじゃダメだと無理をして、さらに傷つきや疲労が積もり積もって・・ついにがんばりの糸が切れてしまう。こうしてひきこもりが始まるのです。
つまり彼らは今、がんばるためのエネルギーがなくなってしまっているので、「できるだけなにもしたくない」「誰とも会いたくない」「ゲームやアニメで現実逃避したい」という状態なのです。
そしてそんな状態の中、親からかけられる言葉が冷えたアイス(例「ゲームばっかりしてるんだったら、明日は絶対学校行きなさいよ!」)だったら・・・と想像すると、その辛さ、理解できますよね。
「行けるんだったらとっくに行ってるよ!!行けないからひきこもってるのに!!」そう叫びたくなる彼等の気持ち、わかっていただけると思います。
とはいえ・・四六時中ゲームばっかりして、あとはご飯、おやつ、寝る、昼夜逆転、そんなダラダラ生活ばかり毎日見せられたら、親としてはイライラしちゃう、その気持ちも・・とってもよくわかります。
でも「なるほど、そういうことでそうなってるのね」がわかると、少しその気持ちも和らぐのではないでしょうか。湧いてくるイライラをぐっとこらえて・・・、今日からでも、あったかいお粥、ぜひ用意してあげてください!!

美作市社会福祉協議会発行「はい!社協です」 2024年9月号